肩の症状五十肩、肩こり、リウマチ、等についての解説記事をご紹介しています。
「リウマチと灸」
慢性関節リウマチ(略してリウマチ)について、最近の読売新聞に衝撃的な記事が載っていましたので、主なところを枠をつけて記しました。 リウマチは女性に多い病気です。女性の平均寿命が85歳で、女性患者の平均死亡年齢が69歳であることから、16歳も若死にしていることになります。これは全国の患者1359人のデータを分析して出た結果です。 なぜこうなるのか。いろいろ原因が考えられますが、治療法にも問題があるようです。 リウマチに八分灸が有効ここで私が言いたいのは、リウマチには八分灸が大変有効であるということです。大切なことは、あまり強い刺激の灸をすえると、かえって悪化する場合があるということです。ですから、八分灸くらいが適切なのです。八分灸とは、もぐさが八分くらい燃えたときにつまみ消す方法で、熱くなく、アトも全く残りません。 すえ方は、副腎に関するツボへの施灸と、患部への施灸の組合せです。なお、お灸と薬品との間には競合関係がありませんので、併用してよいのです。 リウマチには昔からお灸がよくすえられてきました。どうして今もっとお灸をすえないのか、大変不思議です。万葉集に、リウマチと思われる病に苦しむ山上憶良の長歌があります。憶良はしお灸を知らなかったようです。不幸なことです。 「ホームタウン」‘06年6月9日号 掲載
ページ上部に戻る 「五十肩の灸 (1)」『五十肩』は、鍼灸院で治療するもののうち、腰痛・坐骨神経痛・膝関節症に次いで多い疾患です。それだけハリ・灸がよく効くことを示しています。とくにお灸がよく効き、ツボさえしっかりとれば素人でも治すことができます。 ところで『五十肩』とは、肩関節周囲炎の俗称です。しかし、治療家も患者もともに、この言葉をよく使っています。では、いつごろから使われているのでしょうか。 江戸時代中期の福山藩の漢学者である大田全斉の編集した『俚言集覧』の中に、この語が出てきます。この本は、当時の俗語・方言を集めたものですが、この中に『凡(およそ)、人五十才ばかりの時、手腕骨折の痛む事あり…俗これを五十腕(かいな)とも五十肩ともいふ。又、長命病という』とあります。したがって、古くから一般に使用されていたものと思われます。 五十肩は長生き病?ここでおもしろいのは、長命病という記述があることです。なぜ五十肩のことを長命病と言ったのでしょうか。 それは“人生五十年”という考え方が相当古くから庶民の間で確立し、つい最近までそう思われてきたからです。この裏付けはたくさんありますが、一つ挙げてみましょう。 織田信長は「人生五十年、下天のうちをくらぶれば、ゆめまぼろしの如くなり」と好んで謡い、かつ舞ったとされています。また、江戸時代の平均寿命が30歳台であったと推測される点からも、当時の人が50歳を長命と考えたのはもっともと思われます。 一方、アメリカにおいては、かのコードマン体操で有名なコードマンが、これを『frozen shoulder』といいました。直訳すれば『凍りついた肩』ということになります。病状が相当進行し、いろいろな腱が癒着して運動制限を起こし、上腕の動かなくなった状態を実によく表していると思われます。 では、皆さんにお灸をすえていただくための具体的なツボの話を、次回以降にしてゆきたいと思います。 「ホームタウン 70号」 掲載
ページ上部に戻る 「五十肩の灸 (2)」『五十肩』によく効くツボ(今回は身体の前面のツボ)について話をします。まず、その前に予備知識をもってもらいましょう。 肩関節を構成している『上腕骨』の上部には、多くの筋肉が付着しています。一般に筋肉は、両端が『腱』という固い組織になっていて、その腱がそれぞれ別の骨に付着しています。“アキレス腱”が有名ですが、どんな筋肉にも腱はあります。 筋肉が収縮すると、骨が動かされます。多くの筋肉がいろいろな方向に収縮すると、骨の動きも複雑になり、これが上腕骨の場合、手の微妙な動きとなります。 グリグリと溝がツボ
さて、肩の前面を注意して押さえてみますと、1つの溝をはさんで2つのグリグリがあるのに気付きます。このグリグリを、大結節(だいけっせつ)・小結節(しょうけっせつ)といいます。ここには多くの筋肉の腱が付着しており、それらの疲労をとるために重要なツボとなります。 大結節と小結節の間の溝を『結節間(けっせつかん)溝(こう)』といいます。上腕骨にほられたこの溝は、なんのためにあるのでしょうか?ここを『上腕二頭筋』の腱が通るのです。この筋肉は、腕ずもうのとき、最も力こぶのできる筋肉です。また、この腱は、骨と強く擦(す)れあわないように腱(けん)鞘(しょう)というサヤの中におさまっています。 『五十肩』の場合、ここの腱(けん)鞘炎(しょうえん)が起こっており、それを治すために、この溝はお灸をすえる狙い所となります。 以上をまとめると、肩の前面の溝、及びそれをはさむ2つのグリグリのうち、押さえて最も痛むところへお灸をすえるとよいのです。 「ホームタウン 71号」 掲載 「ホームタウン 70号」 掲載
ページ上部に戻る 「五十肩の灸 (3)」皆様にお灸をすえていただくために、前回、肩の前面のツボについて話をしました。今回は、肩の側面にあるツボについて述べたいと思います。 肩の関節には、多くの筋肉が付着しています。それらの筋肉が、いろいろな方向に、あるいは弱く収縮することにより、腕が自由自在に動き、野球のピッチャーのような微妙なコントロールも可能になります。もちろん、一つひとつの筋肉はそれぞれ一定方向にしか収縮しませんが、多くの筋肉の協働作用により、いろいろな方向に腕が動くのです。 側面のツボは三角筋に関係あり
肩の筋肉のうち、最も大きく、したがって最も重要なのが三角筋です。この筋肉はその名のとおり三角形をしており、肩に丸みをおびさせ、腕を水平方向に挙げる作用をします。 三角筋の始まりは肩(けん)甲(こう)棘(きょく)・肩(けん)峰(ぽう)・鎖骨(さこつ)に付着しており、終わりは上腕肩の三角筋(さんかくきん)粗面(そめん)に付いています。三角筋粗面はザラザラしていて、筋肉が付着しやすくなっています。 さて、肩の側面の重要なツボは、全部三角筋に関連しています。
その他、正式の名称はありませんが、前に述べた三角筋粗面のうち、最も圧痛のある所も重要なツボとなります。 「ホームタウン 72号」 掲載
ページ上部に戻る 「リウマチ (1)」リウマチにはお灸が大変よく効きます。それも弱刺激の八分灸がよいのです。八分灸はもぐさが八分くらい燃えた時に消してしまうすえ方で、熱くなくアトも全く残りません。 先日来られたAさん(女性・55歳)の話をしましょう。 速効性に呆然平成元年に発病。いろいろな治療法を試みたがどんどん悪化。ステロイド剤の副作用(胃潰瘍、視力障害等)が強く、それを止めた後、リバウンド現象で余計に悪化。今では両手首、両膝、両足首が腫れて変形し、まともに歩くことも困難。御主人に支えられやっと歩くという状態。 そこで、「今、あなたの一番つらい所はどこですか」と訊くと、「右足首の外くるぶしの下が痛く、踏みしめられない」とのことでした。そこに強い圧通を認めたので12個の灸点をつけ、それぞれに八分灸を2壮ずつすえました。踏みしめてもらうとそこの痛みは消え、次にくるぶしのやや上方が痛いとのことなので、そこに灸点を縦に3列、合計21個つけ、2壮ずつ八分灸をすえました。これで痛みがほとんどとれてしまい、左足首の右と同じ所が痛むということなので、同様の治療をしました。 3番目に、左膝が痛く、ほとんど足を上げられないということなので、お皿にすえたところ、足が簡単に上がりました。治療終了後は御主人の介添えなしに歩け、治療所横の階段を自力で降りられたのです。来た時と帰る時のあまりの違いとその速効性に、本人も御主人もただ呆れるだけでした。 「ホームタウン」‘97年5月15日号 掲載
ページ上部に戻る 「リウマチ (2)」リウマチにはお灸が大変よく効きます。しかし注意すべきは、アトの残るような強いお灸をすえると、かえって悪くなる場合があることです。 そうかといって、紙やニンニク・しょうがなどを皮膚ともぐさの間に挟む“間接灸”では、効果は非常に少ないものになります。先の間接灸を別名『温灸』とも言います。温灸で効くのならホットパックでもよいことになり、一瞬とは言え、熱さを感じるお灸が何千年も続いてきた意味がわからなくなります。 その点、私のお勧めする『八分灸』は、効果の高い直接灸でありながら、もぐさが八分ぐらい燃えて「熱い!」と感じた瞬間につまみ消してしまう方法で、アトも全く残りません。ですから、若い女性も安心してすえることができます。 痛みを大きく軽減
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